街角であった結婚式2015年11月25日 22:38

 雨の祝日,月曜日。仙台駅前の交差点にあるホテルの一角を通りかかると,フォーマルに着飾った老若男女の集団が,街頭で上を見上げていた。みんなの表情は一様に笑顔で輝いていた。一見して結婚式の参加者であることは分かった。しかし,雨がそぼ降る中,傘をさしてまで外に出てくるとは何事だろうと近づいた。視線の先を見ると,ホテル2階にある,階段が通じたバルコニーに新郎新婦が並んでいた。光沢をたたえた黒のモーニングと腰から下がふわりと膨らんだ純白ドレスの対比が映える。そして,幸せそうな笑顔をたたえる二人の目の前には,装飾を施された一抱えほどもある青銅色のカゴが置いてあった。

 やがて,隣にいた式の進行を仕切るホテルマンらしき人が,祝いの言葉を述べ始めた。それを見守る参列者の期待感が高まることが部外者の自分にも伝わってくる。と,次の瞬間。カゴの中から10羽ほどの真っ白な鳩が一斉に飛び出した。

 見つめていた人々の口から漏れ響く「おー」という歓声。続いてみんなの拍手。主役である若いカップルは,互いに見つめあった後に満面の笑顔を参観者に披露した。

 純白の鳩が飛び立った瞬間,カップルのこれからの幸せを信じられるような気がした。清廉さを感じさせる白の印象とともに,閉じた空間から一気に解放される勢いが,未来へ向かうエネルギーや希望をイメージさせるからだと思う。参観者の笑顔を見回すと,同様の思いを共有しているように感じられた。いい場面に立ち会えた幸運に感謝するとともに,幸せをおすそ分けしてもらったような清々しい気持ちになった。

 ところで,飛び立った鳩のその後である。二人の希望を乗せて,力強く大空に旅立ったわけではなかった。ホテルの敷地内,2階ほどの高さにあるーつまりは,カゴの目の前にあった木の枝に「すぐ」飛びついて,飄々と辺りを見回していた。

 多くの人に祝福されたいい結婚式だなあと感じたのは本心である。しかし,幸福の象徴として重要な使命を託されたであろう鳩に,一抹の不甲斐なさを感じたのは私の他にもいたに違いない.....

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