七月隆文著「天使は奇跡を希う」が面白い2016年11月13日 17:11

 僕が作品を追いかけている作家の一人に七月隆文さんがいる。つい先日,待望の新刊「天使は奇跡を希う(こいねがう)」が出た。早速購入して一気読みをした。
「天使は奇跡を希う」表紙

内容紹介-Amazonより引用-
 瀬戸内海にほど近い町、今治の高校に通う良史のクラスにある日、本物の天使が転校してきた。正体を知った良史は彼女、優花が再び天国に帰れるよう協力することに。幼なじみの成美と健吾も加わり、四人は絆を深めていく…。これは恋と奇跡と、天使の嘘の物語。「私を天国に帰して」彼女の嘘を知ったとき、真実の物語が始まる。
-ここまで-

 序盤は,天使である優花と出会い,彼女を天国に返すために協力して「ミッション」を行っていく良史視点の物語。優花の提案する「ミッション」を積み重ねていく中で徐々に優花に惹かれていく良史の気持ちが,舞台である今治の情景と二人の軽快な会話を通して描かれていく。
 中盤からは,天使の秘密と優花の行動の意味を明らかにする優花視点の物語。ときに友人の視点も入り込み,甘くて切なくて愛しい物語が描かれる。

 物語の構成は,ミリオンを記録した七月さんの出世作「ぼくは明日,昨日のきみとデートする」に準じている。秘密が明かされた時,序盤に提示されたエピソードの数々が,違った様相で見えてくる仕掛けだ。人物のちょっとした行動や情景描写が実は伏線であったと分かり,色々と腑に落ちてスッキリする。

 本書を読み終えた僕は,煤けた灰色の容器に収まっている心を取り出して,レモンイエローの透明な容器に移し替えたような爽やかさに満たされた。相手を思いやって行動する純粋さと物事に正面から向き合う行動力が嬉しい。明日への活力を得ることができる物語だった。

評価:★

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