牛タン定食を食べる2016年09月17日 18:11

 突然食べたくなって,昼は牛タン屋に行った。名物に数えられるだけあり,仙台にはたくさんの牛タン屋がある。その中でも僕が一番好きな店は国分町にある「旨味太助」だ。この店は牛タンを現在の形ーつまりは,炭火焼の牛タン,漬物,テールスープ,麦ご飯という形で食べさせるようにした牛タン発祥の地として有名だ。

牛タン屋

 店にあった紹介文によれば,終戦後,焼き鳥屋を営んでいた当時の店主が,洋食の牛タンシチューに発想を得て考えたらしい。当時からマスコミの取材を受けるほどの評判があったそうで,それに目をつけた仙台市の観光担当者が後押しして,仙台名物として広まったということだ。

 牛タンはここ数年の需要の増加から価格が高騰しているため,気軽に食べるには少々高価な食材になってしまった。各店の牛タン定食の代金は,僕が街中を歩いてメニュー看板から得た狭い情報によると,1600〜2000円程度が中心だと思う。定食の基本形はほぼ同じだが,セットの中身を見れば,漬物の野菜が違ったり,とろろ小鉢が付いたり,肉の量に多少があったりと店によって個性が出る。そして,その個性の中でも特に大事なのは,もちろん牛タンの味だ。

 あえて誤解を恐れずに言うならば,牛ステーキは,店で食べても家で焼いて食べても大きな違いがないと思う。良い肉を買ってきて正しい焼き方をすれば,塩コショウを振るだけでも十分上手い食べ物だ。味は,市販のソースをかけて食べることで,ファミレスのステーキと肩を並べるどころか,超えることさえ可能だ。

 しかし,牛タンの場合そうはいかない。そもそも牛タンは「高価な牛タン」というものを普通の店では見ないし,生肉を買ってきて塩コショウを振って焼いたからといって,店で食べる味に近づくことさえできない。それは,味付けと熟成により,牛タンを食材として育てる要素が大きいからだ。だからこそ牛タンは店で食べたい。
(スーパーで売っている味付け牛タン。あれならばおいしい。僕は時々食べる。しかし,炭火を用意することの面倒さからたいていフライパンで焼くことになり,そこが少しだけ残念になるところ)

 さて,牛タンはどこの店で食べてもたいてい美味しい。そんな数ある牛タン屋の中で,僕が「旨味太助」を愛する理由は2つある。

 一つ目は,牛タンのワイルドさが好きだからだ。見た目は,スライスした牛タンに切れ込みを入れて焼いただけ。一切れ一切れの形や大きさはまちまちだ。それらには,噛んだ時にプリッとした弾力を残して切れる肉もあれば,やけに歯ごたえがあって格闘する肉もある。そうした食感の違いがおいしい。
 他の多くの店は,形を一口サイズに切りそろえたり,食べやすいように肉を柔らかくしたりしている。それに比べた時の「太助」らしさが好きなのだ。

 二つ目は,値段の安さだ。つい先日まで牛タン4枚の定食を1300円で出していた。今日行ったら1500円になっていたが,それでもまだ他店より安い。個人的評価では味ランキングで1,2を争う店なのに,その上4枚肉の店として一番安いのだ。もう,意味がわからない。(^_^)

 今日も店は混んでいた。12席ほどあるだろうか,L字型のカウンターは満席だった。そしてなぜか女性が多い。男性は僕を含めて3人だけだった。

 隣の女性は一人で食事に来ていて,定食が出されるとカメラで写真を撮っていた。比較的静かな店内にシャッター音が2度響いた。僕はその様子を横目で見ながら
「勇気があるなぁ」
と思っていた。実は僕も写真を撮ってこのブログで披露しようと思っていたのだが,マスターの目の前に座った上にこの店の静けさの中,それを躊躇していたのだ。

 その女性の行為を見ても,なんだか静かに食事を楽しんでいる他のお客さんの迷惑になるような気がして,写真を撮ることはできなかった。というわけで,これだけ話を進めながら,出した写真が店の看板だけとなりました。

追記
 やっぱり写真が欲しかったので牛タン専門店サイトから写真を拾ってきました。

太助の牛タン